会社が「解雇し放題」となる日

 

twentysr.hatenablog.com

先日のエントリーで、使用者賠償責任保険について書きましたが、なんとその商品には特約があるということが最近わかりました。

 

https://www.web-tac.co.jp/sharoushi-shiyoushabai/pdf/kanyo_pamphlet.pdf

 

こちらは全国社労士会が行っている保険の代理店事業のパンフレットなんですが、詳細が書かれてあります。

 

以下参照

 (雇用関連賠償責任保険)

日本国内において行われた侵害行為(*1)により発生した事故(*2)に起因して、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担された場合。ただし、保険金をお支払いするのは、被保険者に対する労働者(過去に労働者であった方および労働者となるための申し込みを行った方ならびにこれらの方の法定相続人を含みます。)からの損害賠償請求が保険期間中に日本国内においてなされた場合に限ります。
(*1)侵害行為とは、以下の事由をいいます。
●労働者の募集、採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年、退職、解雇、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的または不利益な取扱いを行うこと。
●職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者に不利益を与えることまたはその性的な言動により就業環境を害すること。
●職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を利用して、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えることまたは職場環境を悪化させること。
(*2)事故とは、他人の精神的苦痛(それに起因する身体の障害を含みます。)または自由、名誉もしくはプライバシーの侵害をいいます。

 

 

小難しい文章が並びます。では以下で解説しましょう。

 

解雇も保険の対象となる

いきなり本題から入ります。

結論から申し上げますと、解雇のバックペイも保険金支払いの対象となるようです。この時点でお察しの方はわかると思いますが、この条項が解雇し放題ということつながります。

バックペイの説明に関しては以下のサイトが非常に詳しいです。基本は解雇を言い渡した日の翌日から確定判決の前日までの給料が一気に支払われるということです。

平松剛法律事務所 | 解雇 解決のために知っておくべきこと

 

日本ではどうしても解雇が認められづらい現状があります。私もお客さんには「解雇で訴えられたら会社が勝つことは厳しい」という話をいつもいつもします。

 

しかしながらどうでしょう、解雇のバックペイまで保険で賄えるとなると、会社へのアドバイスの仕方が変わります。そう、「保険に入っていれば解雇しても構いませんよ(助成金は出なくなるけどね)」ということになるのですから。

 

これは私も職業倫理的に物議をかもす問題かもしれません。労務士の目的には労働者の福祉の向上がありますから。でももともと解雇予告手当さえ払ってしまえば、あとはその解雇が有効かどうかなんて最終的に裁判所が決めるものだから、その解雇がいいとか悪いとか労務士がとやかく言う問題ではありません。ということでこのようにアドバイスしても倫理的にどうのこうのという問題は出てきますが、少なくとも法的には全く問題ないということになります。

 

かくして、この保険が世に広まれば会社はもう強気で「明日から来なくていいよ!(訴えたかったら訴えてね)」ということがまかり通るのです!

 

なお、解雇無効が認められると、復帰しなければなりませんが、そこで辞める方が大半ということを付け加えておきます。解雇無効の裁判の大半は金銭解決のみとなっております。

 

また、保険会社によっては保険金の上限が1000万円までという縛りがあったりしますので、保険金額の設定には注意しましょう!

 

他の保険金について

この保険では、パワハラ、セクハラによる損害賠償に関しても保証されてます。まあ視点を変えればパワハラ、セクハラもし放題となるのでしょうが、解雇とは違って、刑法上の不法行為ともなりえる行為ですので、パワハラ、セクハラはし放題ではないことは追記しておきます。あくまでも従業員がそういうことをするかもしれないというリスクをお抱えの会社に関しては有効ですよと、そういうことですね。

 

弁護士費用も出ます

保険金をお支払いできる内容であれば、弁護士費用もセットでついてきます。会社にとっては怖いものなしですね。

 

ただしこの保険には1点だけ弱点があります。

未払い残業代の請求に対しては対応できません

 

まあこれは当然っちゃ当然でしょうけどね。未払い残業代に関しては、従来通り会社が不利かということですね。この場合は解決金は出ませんし、弁護士費用もつかないようです。ただし、他の保険金が出る訴えと一緒に請求されている場合、この場合は弁護士費用はつくようですね。まあどちらかというと会社に訴えるときは一緒に残業代も入れとこっかみたいなことになる場合が多いかと思いますので、使えないことは無いかと思われます。

 

労働者の対抗手段

繰り返しにはなりますが、労働組合を作るしかありませんね。

労働者にとっては資本との唯一の対抗手段です。ほかに方法はありません。

あとはまあ、侵害行為を受けたら遠慮なく訴えていいんだよってことは繰り返しですが申し添えておきます。

 

 

 

弁護士会ブログ|京都弁護士会

 

京都弁護士会のブログがありました。

 

「嫌いなモノ、何?」だって。

 

即座に答えます。

弁護士です。

 

ってね。

 

 

結局先日倒産した会社の最後の手続き関連(離職票等々)の報酬がもらえないことが判明しました。

いや、倒産に関する費用に入れとけよっていう。。。

 

今回の倒産ケースに関しては従業員とのやり取りを含めて相当な労力を使いました。にもかかわらずボランティア扱いってどういうこと?弁護士はそういう調整能力はないわけ?自分らは100万近くの報酬をもらっているにもかかわらず。

 

もともと私が手続き関連しなかったら、誰かがやらないといけない仕事ですからね。弁護士でも代行はできませんし。

それを前もって私がやってたというだけの話なのになぜか報酬が一銭ももらえない。

 

こんな不正義なことが許される世の中なのである。

 

もちろん弁護士にはクレームは付けました。私は仕事関係の方にはよっぽどのことがない限り言わないのですが、今回に関しては我慢なりませんでした。

 

クレームでも言いましたが、大した仕事しないくせにがめついんですよ弁護士は。中には誠実な先生方もいらっしゃるでしょうが、こういう仕事ばっかりやってたらそりゃ嫌われますわな。

にしても今回は別に誰からも何も言われてないでしょう。いろいろ言われたのは私からぐらいでしょう。私からのクレーム一つの処理で100万近くの報酬もらえるなんていい商売だな弁護士は。我慢料にしては高すぎるよ。

 

 

倒産間際の手続きに関しては、破産手続きに入る前に直接社長からキャッシュをもらわないとだめだということがよくわかりました。

従業員さんには悪いですが、それをもらってからじゃないと離職票等は出せません、ということまで言わないと、後になって請求してもお金は一銭ももらえませんということが今回判明しましたので注意しましょう。

 

ボランティアでやりたいのでれば別ですが。

 

 

いずれにしろ今回の事件で弁護士の印象は最悪になりました。まだ怒りが収まりません。

中嶋浄次郎社労士逮捕について

www3.nhk.or.jp

 

先日は「鬱に罹患させる方法」をブログに書き、懲戒処分を受けた社労士がいましたが、今度は正真正銘の逮捕者です。。。何やってんだかな・・・。

 

まあ寝耳に水でした。私はもろ福岡東ハローワークの管轄ですから、今電子申請がメインなので行きはしませんが、事務所勤めの時は毎週くらい行ってましたね。

 

そして、記事を読んでも何かよくわからないのではないでしょうか。情報漏えいということはわかるが、どういう情報を漏えいしたのか、なぜ課長という地位でそんなことをしてしまったのか、いまいちよく伝わってこない。

 

ここからはあくまでも推測の域ではありますが。

 

中嶋氏の顧問先から、従業員の履歴が合っているかどうか等を調べてほしい、そんな依頼があった(もしくはそういうコンサルティングをほのめかした)のがきっかけではないのでしょうか。

 

一般に会社に勤める際には、履歴書を提出するわけですが、その真贋を見定めることは容易ではない。探偵などを使えばできないこともなかろうが、そこまでするための費用対効果が合わないため、実際には履歴書を信じるしかないであろう。

 

実際に職歴を偽って入社した者には、解雇をはじめとする何らかの処分は可能ではあるが、全部が全部解雇が可能というわけではありません。一般的には「真実を告知したならば採用しなかったであろう重大な経歴」にあたるかどうかを懲戒、解雇等の処分の効力を判断することになります。

 

社労士ならばとうぜんこのことを分かったうえで、「うちは従業員の職歴詐称がわかるんですよ!」などで客のウケをとっていたのではないか。

 

当然これは個人情報の漏洩なので、違法も違法ですね。

 

今回は本人らが罪を認めているかどうかは書いていません。なので、当然ひっくり返ることもあるのでしょうが、この事件が真実であったとすると、氷山の一角に過ぎないと思われます。

 

全国の職安でも同様の調査を実施してもらわなければ、厚生労働省をはじめ、我々社会保険労務士の信頼も地に落ちてしまいます。一刻も早く厚生労働省には動いていただきたいです。

 

 

ちなみに彼の名前を検索しても、あまりヒットしませんでした。それどころか、提携パートナーとか記載していた事務所らの名簿からもう名前が消えてました。仕事が早い!↓↓↓

事務所案内 | 福岡の就業規則作成や人事制度・人材活用は株式会社KS人事研究所

 

 

キャッシュが残ってました。↓↓↓

http://cache.yahoofs.jp/search/cache?c=rfRCGX6MAv4J&p=%E4%B8%AD%E5%B6%8B%E6%B5%84%E6%AC%A1%E9%83%8E&u=www.syarousi-search.com%2Fx%2F4013300002

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女性活躍加速化助成金について

概要

 

女性活躍加速化助成金とは?

 

女性活躍推進法(H28.4.1施行)にさきがけて、女性の活躍推進に取り組む事業主の方を支援する助成金です。

 

*1

 

自社の女性の活躍に関する「数値目標」、「数値目標」の達成に向けた取組内容(「取組目標」)を定め、達成することで助成金が支給されます。

 

ということで非常に使いやすい助成金となっておりますので、ぜひとも活用したいものです。

 

●助成額

加速化Aコース:30万円

加速化Nコース:30万円

合計60万円

 

●加速化Aコース詳細

対象:中小企業のみ(常時使用労働者数300人未満)

助成金支給までのながれ:

①一般事業主行動計画を策定する。

②①を周知、届出、公表

③目標を達成するための取り組みを行う

 

これだけで30万円もらえます。

 

●加速化Nコース

対象:全企業

助成金支給までの流れ:

①加速化Aコースを達成した上で、目標数値を達成する。

 

 

かなり単純な助成金となっております。早い者勝ちですので早めの取り組みをお勧めします。

 

注意点

男女雇用機会均等法について

目標については、男女雇用機会均等法に反しないことが必須となります。女性を優遇させる取り組みをする場合は、その部署や役職において女性の割合が4割未満であることが必須となります。

ここが最大の注意点になるかと思われます。

例えば、男女比5:5の営業部において、「女性の営業職を増やす」という目標を立てるのは男女雇用機会均等法に反しません。※1 ですが、その目標達成のために「女性を対象とした採用パンフレットを作る!」というような取り組みをすると、男女雇用機会均等法に引っかかることとなってしまいます。女性の割合が4割を超えている部署や職種においては、取組目標に注意しましょう。

※1 2016/5/31追記 

既に4割を超えている部署や職種においての目標設定は、均等法に反することにはなりませんが、女性活躍加速化助成金の支給対象からは外れるようですので注意が必要となります。

 

●取り組み目標について

数字目標は例えば、「女性の管理職の割合を5割にする」などイメージはしやすいかと思います。しかし、取組目標については、よくイメージがわかないのではないでしょうか。本助成金は、取組をしただけで貰える助成金ですから、取組をしたがやっぱり女性の活用はやめとこう・・・。という姿勢でももらえるというちょっと危ない助成金となっております。

そのため、取り組み内容については、割と厳しめの審査が入るのではないかと予想されます。

ただし、厚生労働省のホームページでは、取組の例がすでに出ております。この中のいずれかの取り組みをすることで、取組目標と認定されるかと思われます。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000107832.xlsx

こちらの支援ツールの最後のタブに記載されてます。

 

最後に

この助成金は他の助成金と異なり、就業規則を提出したり、従業員の出勤簿や賃金台帳等を用意する必要がなく、ほとんど手間なく完了します。そのため、助成金目的で取り組んだとしてもおつりがくる非常に使い勝手の良い助成となってます。

もちろん助成金だけを目当てにしてはダメですよ!

しっかり助成金をもらって、そのうえで女性を活躍させてください!

 

 

 

参考サイト

女性活躍推進法特集ページ |厚生労働省

女性活躍加速化助成金Q&A

女性の活躍推進に取り組む事業主の皆様へ

 

*1:厚生労働省パンフレット『女性の活躍推進に取り組む事業主の皆様へ』

朝まで生テレビ元旦スペシャル2016について 『トリクルダウンはありませーんっ!ww」

毎年見てます。

まあ別に何が面白いってわけではありませんが。

 

 

ただ、今年は衝撃的だった。

 

竹中平蔵氏が『トリクルダウンはない』と明言したからであった。

 

トリクルダウンとは?

トリクルダウン理論トリクルダウンりろん、trickle-down effect)とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする経済理論または経済思想である

*1

 

私の理解では、1990年代後半から始まる労働市場規制緩和は、このトリクルダウン理論が旗印となって進められたと理解していた。その考えがすべて崩壊したのであった。

 

小林よしのり氏がブログでこのことに言及した結果、今ではまとめサイトにも多くこのことは拡散しているが、私は実際にこの耳で聞いた(というか録画している)。

 

正確には「私はトリクルダウンという言葉を使ったことは一度もないんです」

 

まあそりゃトリクルダウンという用語を使ったわけじゃないでしょうけど・・・。

 

そのあと

「口を開けて待っていてもだめなんです」

というような発言をしていた。

 

いやいや、これには参った。

 

確かに彼は「トリクルダウン」といったことはないだろう。彼の本を読んだことがあって、「竹中は新自由主義だというレッテル貼りは愚かだ」というようなことは言っていて、「あの時にやるべき政策として『小さな政府』を選んだ」というようなことを言っていたが、それでもその時はレーガノミクスの理論で小さな政府を選んだにすぎないのだと思うのだが。

 

私は経済学を軽くかじった程度の人間だが、もともとトリクルダウンはないと思ってはいた。しかし、反面、あるのかなーなんてことも1割程度思ってはいた。

 

困ったものだ。

こんなことが、こんなことが許されるのだろうかw

 

彼と田原総一朗氏との共著では、

○「法人税減税で庶民にメリットはあるのか」と題して、法人税を下げて、企業が儲かったら、日本経済を上向きになり、庶民にもメリットがあるとしている。

*2

 

いわゆるこれがトリクルダウンってことじゃないの?

と思うが、もうそんなことはどうでもいい。彼が「嘘でした」と明言したのだから。

 

 

おまけ

 

昨日の日経新聞記事より。

産業景気予想ですが、こんだけ業種が分かれていて「晴れ」はわずか3業種だけ。

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はい、「通信」「旅行ホテル」そして「人材派遣」

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ちなみに正社員化を進めると書いてありますが、当然国から「助成金」がもらえます。

 

彼のビジネス手腕は素晴らしい。レントシーカーという言葉があるらしいですが、まさに彼にふさわしい通り名でしょう!

*1:wikipediaより

*2:ちょっと待って! 竹中先生、アベノミクスは本当に間違ってませんね? 単行本(ソフトカバー) – 2013/12/24  Amazonレビューより 

そして従業員がいなくなった・・・の場面に遭遇した件

私の数少ない顧問先がどえらいことになった。

 

まあ財務状況がよくないことはわかっていたのだが、決定的な場面に出くわしたのであった。

 

 

朝、社長から電話がかかってきた。

「会社を清算することに決めた。あんたのところで何ができるか教えて」

 

寝耳に水とはまさにこのこと。今日は別の予定があったが、急きょすっとばして会社に訪問することに。

 

私は社労士なので、破産とか清算とか詳しいわけじゃないけども、できることとすれば解雇となる従業員の離職票作成、社会保険喪失、労働保険の確定申告などの分野でしかない。

私の提案としては、会社を続けるのであれば、どっかから金を借りるしかない。それができなければ民事再生や清算するしかないですよ、と、ごく当たり前のことしか言うことはできなかった。

 

小一時間話すと、「私は清算じゃなくて、今後もやっていくつもりだ」と、電話で聞いた話とは別の話となった。

 

後ろで聞き耳を立てていた従業員の方々が全員こちらにやってきて

 

「社長!朝と話が違うじゃないですか!!」

 

ここまでは予想はしてなかった。

どうや2か月給料が遅配しているようだったのだ。

 

従業員の方も生活があるので、もう背に腹は代えられないということで、もう社長に最終通告をしたのだった。

 

「解雇扱いにしてください!もう我々は生活ができんのですよ!」

 

まあ従業員さんは間違っていない。

皮肉にも私も過去、給料遅配の経験があり(そのきっかけで社労士を目指そうと思った)、気持ちは非常にわかるのであった。

 

労働者はこういう状況になったら、どうやったらいいのかいろいろ調べる。そして辞めるものは早期に辞め、最終的に長く勤めていた者たちが残っていく。まさに私が6年前に見た光景と一緒だ。

 

こんな状況の中で、「失業給付が~」なんて話をしようと思ったら、

「それはもういろいろ調べたからわかっとる!とにかく解雇にしてくれ!」

 

と、なぜか私に食って掛かるような言い方をされるのだった。

 私も一応プロでやっているので、

 

「解雇はあくまでも会社の意思になるので、社長がどうするかということになる、本来はどういう形であれ、ご自身で辞める決断をされた場合は、自己都合退職という扱いになる。ただし、辞めるにあたっては自己都合で辞めたとしても失業給付が優遇される制度がある。給料が2か月遅延した場合~」

 

そういう話をすることしかできなかった。

 

厳密な話をすると、今回は社長が解雇をするということを言っているのではなく、あくまで従業員が辞めるという意思決定をしたので、解雇にはならない、とまあ本人たちにすればなんとも納得いかないようだったが、その話はなんとか理解してもらった。

 

そして最終的には退職勧奨という形で落ち着いた。

 

本来は自己都合退職でよかったのだが、そうすると手続き上の問題で、給料が支払われなかった旨の証明がいることになり、少し面倒なことになる。年内には求職申込の手続きに行きたいということだったので、自己都合だと場合によっては失業給付の手続きが遅れる場合があるということを本人たちは言っていた。

 

まあ本来ならあくまでも自己都合で終わらせるのが本来の形なのだけども、多少なりとも私はシンパシーを感じていたのかもしれない。退職勧奨という形が一番良いだろう、そう社長に進言し、事なきを得た。

 

 

 

会社をたたむときは、従業員、債権者、あらゆるところから攻撃を受ける。

従業員とのやり取りというのは、下手したら債権者よりも嫌なやり取りなのかもしれない。

今回はまさか退職の話になると思ってなかったので、失業給付の資料などは持ってきてなかったのだが、失業給付の額、退職後の健康保険について(任継か国保か。国保の場合は軽減措置がある等)、未払い賃金立替払い制度について(事実上の倒産というのは労基署が判断する。夜逃げは対象だが、社長が続けるといっている以上は難しい旨)はきちんと説明できた。

 

こういうときは相手もよく調べているので、「社労士の癖に知らんのか!?」などとこういう場面ではよくあるようなセリフが飛び交うこともあるが、今回は聞くこともなかった。(今回の場合は、自己都合でも解雇でも失業給付は優遇される旨を説明をしたときに「あんた制度のこと知らんな?」となじられそうになったが・・・。)

 

きちんと説明することで、従業員の方はおおむね納得された様子だった。まあ、本来ははらわたが煮えくり返るような思いだったでしょうが、年齢層が高かったこともあってか納得していただけた。あとは離職票については速やかに発行するということを約束したのも、納得してもらった要素の一つであろう。

 

本来はこんな状態になれば、離職票すら会社は発行できないので、非常に手続きは難航する。しかしながら、我々のような社労士が間に入ることで、速やかにことが荒立たない形で終わらせることができる。

 

今回はこんな場面を事を荒立てることなく終わらせられて本当によかった。自画自賛だ。

 

まあこんな風になったら、社労士がいなかったらスムーズに進まないよってことは会社にも従業員にも理解してほしいですね!今回は社労士としてしかできない仕事。非常にやりがいはあった。

しかしながら報酬は発生しない(泣)

離職票も一気に書かなきゃいけないし、仕事が増えるんだけどね・・・。

ワタミ和解金支払いにコメント

www.nikkei.com

 

―居酒屋チェーンを経営するワタミ子会社の正社員だった森美菜さん=当時(26)=が2008年に過労で自殺したのは会社の責任だとして、両親が会社側に損害賠償を求め東京地裁に起こした訴訟は8日、ワタミ側が約1億3千万円を支払い、謝罪することで和解が成立した。―

 

ブラック企業の代名詞』とも言われるワタミですが、なんと過労の末の自殺者の遺族に訴えられてまして、先日和解が成立したようです。1億3000万円という非常に高額な金銭解決という内容となりました。

 

実は和解金自体はあまり会社にとって痛手ではない

『使用者賠償責任保険』という保険をご存知でしょうか。

お仕事中のケガ、うつ病による自殺や過労死などの労災事故で、従業員など(加入者に限ります)からの訴訟などにより、会員企業やその役員が法律上の賠償責任を負った場合の賠償金・弁護士費用などをお支払いする制度です。
 *1

 別に宣伝ではありませんので!

実はこの保険に入っていれば、裁判にかかった費用、損害賠償、解決金などが補償されます。まさにブラック企業であれば喉から手が出るほど欲しい保険ではないでしょうか。この中には判決による賠償はもちろんのこと、途中で和解に至った場合でも補償されます。

 

ワタミがこの保険に入っていたのかどうかはわかりませんが、おそらくあの手の会社であれば入っていてもおかしくありません。

ワタミに対して「ぷっwブラックざまあwww」なんて思ってる方もいらっしゃるでしょうが、実はワタミには痛手はありませんでしたみたいなことも大いにあり得ることを知る必要があるでしょう。

 

むしろ痛手は風評被害

この手の裁判等で一番企業が恐れるべきは、風評被害のほうでしょう。

7522 ワタミ(株) (ワタミ) チャート :日経会社情報:マーケット :日本経済新聞

株価だけの単純な評価だけでも、ここ5年は株価がダダ下がりです。もちろんそれ以外の要因もあるでしょうけども、『ブラック企業』というレッテルの元で売り上げが下がった例として未来永劫語り継がれることは避けられません。

 

今後企業活動においては、労務管理の怠慢が売り上げに響くということを肝に銘じなければならない時代が来ているのではないでしょうか。