2014/8/30 朝まで生テレビ批評

この日のテーマはアベノミクスで「激論!アベノミクスと日本人の幸せ」でした。

経済についての議論については、竹中は正論を言っているように聞こえましたが、労働に関わる部分については、私の視点から見て全く納得行くものではありませんでした。以下批評いたします。

 

安倍内閣では、アベノミクス第三の矢で、「働き方改革」というものを打ち出している。これについての議論が、だいたい放映から1時間経った頃始まる。

 

 

竹中平蔵「・・・残業代を払っていない、つまり労働基準法を当てはめない働き方が増えている。それに合った法体系に今なってない。そういうルールを明確化しましょう。」

 

現行の労働基準法では、みなし労働時間というものが認められている。労働時間管理がそぐわない業種や業務の場合に、何時間働いたとしても、一律8時間働いたものとみなす、というのが制度の趣旨。それが専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制事業場外のみなし労働時間制である。

 

企画業務型裁量労働制というのは、企画、立案、調査、分析の4つの業務に適用される。

 

専門業務型裁量労働制というのは、こちらの業種に適用される。 

竹中先生のおっしゃっていた大学の教授はこちらの制度活用で残業代を払わなくていいということになるのだ。

 

事業場外のみなし労働時間制というのは、営業などの社員が社外に出て、いつ戻ってくるかわからない場合に適用される。(携帯電話等がなかった時代の法律なので、現代にはそのまま適用できるわけではない)

 

竹中先生は、法体系がなされていないと仰っていましたが、この現行の法律で十分対応可能です。ちなみに制度導入は結構面倒です。しかしそれくらい面倒なことをしないといけないくらい労働時間の問題というのは重要なのです。長時間労働を法律で抑えてきたという歴史事実を無視してはなりません。

 

 

長谷川幸洋「1日8時間働く仕事もあるだろうけど、業種によってはある時期集中して仕事があるってことがある。一番わかり易いのは引越し業界。引っ越しは3月4月に集中するでしょ。(中略)1日8時間の正社員で割り切ったら大変だということで、パート・アルバイト派遣からでも間に合わせたい、そしてそこだけ働きたい社員もいる。

 

池上彰を目指しているようですが、無知にもほどが有りますね。

 

現行の法律では、1年単位の変形労働時間制という制度があり、繁閑に合わせた労働時間管理というのが可能です。もちろん、1日あたり10時間まで、週52時間までという制限はありますが、これを敷いたから残業はなしというわけではなく、残業は今までどおりさせても構いません。そもそも引越し業界の正社員が定時で帰っているはずはなく、恒常的に残業してるでしょう。ですから、正社員が繁閑に合わせて云々というのは意味が無い。

4月だけ働きたい方がいるという説明も、登録型派遣で対応可能だ。

長谷川さんの発言には全く意味を持たない。

 

 

竹中平蔵「正規と非正規の間にこんな不平等があるっておかしいんですよ。」

森永卓郎「格差を埋めるなら、非正規の最低賃金をどんどん上げていけばいいんですよ。」

まあ、これは森永さんの正論です。

 

 

竹中平蔵「終身雇用年功序列がひとつのルールとしましょうか、もしもね、そしたらベンチャー企業なんか起こせないですよ。ベンチャー企業で雇うときにあなた年功序列で終身雇用ねって、雇えるわけないじゃないですか」

 

ええと、ベンチャー企業とか、中小企業に就職する人間て、そもそも終身雇用年功序列と思って入社しませんから。ソースは私だ。

 

 

竹中平蔵「例えば雇用のルールとか、解雇のルールが法律で全然定められてないんです。1979年の東京高裁判例で非常に曖昧に定められている。(中略)訴訟リスクを感じるような大企業は終身雇用年功序列でやめさせないんですよ。ところが、どうせうちなんか訴訟されないと思っている中小企業はバンバン首切れるんです。だから今の制度はものすごく不公平なんです。」

 

長谷川幸洋判例ってのが非常に大事で、その中で4要件ってのが有るんだけど、そのうちの1つの中にね、あなたクビを切るなら、クビを切らない努力はしましたか?ってのがあるんです。それは何かというと、非正規の人の首を切りましたたかっての。何が言いたいかって言うと、判例の体型の中で正社員の雇用がものすごく守られている。」

 

このお二人の中では従業員の解雇は整理解雇しかないらしい。

おさらいしておくと、解雇の種類というのは大きく分けて4つある。

①普通解雇 ②懲戒解雇 ③整理解雇 ④その他の解雇

竹中先生、長谷川さんが仰っているのは、このうちの③整理解雇である。

整理解雇っていうのはほとんど大企業が使うものであり、中小企業が使うのはこの内①と②であり、懲戒解雇についてはハードルが高いので主に使うのは①である。「明日からもうこんでいい!」というのは一般的には①の普通解雇である。

 

一般的に事業の継続が厳しくなった場合は、雇用調整助成金というものがあり、従業員の一時休業については国から補助が出るのだ。中小企業で、例えばリーマン・ショックのような大事が起きた場合はこの制度を利用することとなる。(大企業は支給額が下がる)

 

整理解雇のみを論題にあげているのはよくわからない。

 

 

長谷川幸洋「海外では、ジョブディスクリプション、仕事の中身をはっきり決めるというのがまず一番、次が給与。その次雇用期間。長くて3年。アメリカでは2年。これが世界標準。」

 

つづく